高校の講師を初めて3年半がたつ。
私が勤務する高校は、普通科の高校というよりは、私学の心の病を持つ生徒を積極的に受け入れるところ。だから、生徒の成績などは、ピンキリである。かなり優秀な生徒もいれば、もちろん落ちこぼれもいる。といって、馬鹿ではない。
そんな中で、情報という教科を通して、私はいろいろな学びを得ている。教えることはもちろん。高校生を通して見る現代の家庭の形、子供たちの心、そして背景となる社会の姿などがありありと見えてくる。
この前も、生徒と激しくバトルをした。
ことの成行きはこうだ。
授業中のタイピング練習のとき、遊んでいた生徒がいたので(彼女はいつも遊んでいる生徒)注意した。それでも、おしゃべりをやめないし、やらない。で、何度も注意して、今度は私は彼女の傍にたってやった。
それでも、遊ぶのをやめないので、「あんたら、いい根性しているね。先生が横でたっているのに遊んでいられるなんて」と行ったら、返ってきた言葉はなんと、
「関係ないもん!」
だと。
何が関係ないだー、このクソ餓鬼!!と思ったと当時に、怒りがめちゃくちゃ込み上げてきた。
「なにが関係ないだー!大人をなめんじゃねえよ!」と大声で返してやった。ビビっていた彼女。
しかし、すぐに開き直って、また遊びだす。
「おらあ、もう出てけ!」
といって、素直に出ていってくれればいいんだけど、出ていかないんだよな、これが。
で、何度も「でてけ!」と言ったが、完全無視。
こんな、大人をなめきった生徒はほんといらんわ!と思った。おそらく、これまでやってきた中で、一番、怒りをいだいた生徒だろう。
人が怒ると、「ニタニタ」と笑っているし、ほんとたちが悪い。
で、途中休憩を入れた後、戻ってきた私は、
「はい、授業やる気ない人、今すぐ出ていきなさい。遠慮しなくていいよ」と言う。
誰も動かないので、「出ていかなくてほんとうにいいの?遠慮しないでいいんだよ。早く出ていってくださいね。迷惑だから。」
と何度も言う。しかし、奴は出ていかない。
その後は、静かに遊んでいたが、まったく反省の色は見せなかった。その件については、もちろん担任の先生に連絡。そして、他のクラスでも、その日、彼女は問題児だったらしい。
で、結局、その日の帰りに、担任の先生は全体指導とともに、彼女を個別指導。そして、彼女の真意を聞き、反省させたという。次の授業のとき、私に最初に謝罪をするということになっているそうだ。
それが明日だ。
私のいかりはしばらく収まらなかった。なによりも、平気な顔をして大人を馬鹿にする態度が許せない。
聞くところによると、彼女の家は、継母なのだそうだ。で、継母が彼女に対してあまり良い態度ではないらしく、それで朝からむちゃくちゃしていた、というのが理由だそうだ。
こういった問題を起こす背景には、必ず家庭環境の問題が存在する。やはり、親がしっかりとしていて、ちゃんと愛情を持っていろいろ教えながら育てれば、こどもはこんなにもひねくれない。
私も事情はわかる。だからといって、学校の先生に対して「関係ない」といって反抗して、大人をなめきっているのは許せないことだと思うのだ。
でも、私も、「関係ない」といってほおっておいてもいい。できれば、ほおっておきたい。
でも、それはちょっと可哀想。彼女もある意味被害者なのだから。
ま、それはともかく、この仕事を3年間以上やってきて思ったこと。
1年目は、こういった生徒の対応にあたふたして、自分との価値観の違いや生徒の向き合い方に頭を悩ませた。
2年目は、少しずつなれてきて、新学期から生徒を絞めて、授業を進めるコツを覚えた。生徒からも慕われるようになった。
3年目は、生徒をぐいぐいとひっぱり、授業をまじめに受けさせる雰囲気を作ることできた。
4年目は、なんでも来い、というように、生徒と正面から向き合い、叱るときは思いっきり叱る、ほめるときは褒める、を徹底して、生徒をコントロールしている。多くの生徒が、「先生の授業がいいな」と言ってくれるようになった。
私自身、いろいろな葛藤を乗り越え、こうして今までやってきたけれども、生徒と上手に向き合えるようになったことはうれしい。
でも、3年で、ある程度きわめてしまうと、いろいろなことを冷静に見ることができるようになる。
そして4年目。生徒と正面から向き合うことも、叱ることも平気だし、もうなんでもござれである。
しかし、ここまで来て、そしてこの前の生徒とのトラブルから気づいたこと。
「私のやりたいことって、若者の更生だっけ?」
いや違うよな。「高校の教諭」として私は勤務しているのではなく、私は専門分野を教える講師として勤務している。
「私がやりたいことは、こっちじゃなくって、もっと専門分野に特化したことを教えることじゃないのか?」という気づきがあった。
うすうす、もう高校は卒業しようと思っていたのだが、今回のトラブルで、「やはり私は、ここでつづけるべきではない」と気付いたのだ。
来年からは、専門学校で、新たな教科を担当することになり、授業数が増える。もうこうなったら、専門学校に絞り、空いた時間は、社会人に向けて、私の専門分野のノウハウを伝えていくという手段に切り替えていかなければならないと感じている。
もちろん、こういう気づきが得られたのも3年という期間があったからこそなのだろう。
高校の仕事で学んだことはとても大きいものだ。でも、学生が学ぶことを学んだら卒業するように、仕事も、自分で学ぶことを学んだらそこから卒業して、次の道で新たに活躍する努力をしなくちゃならない。
結局、そういう時期なんだね。そろそろ次の進路に向けて、動きださないとなりませんね。